梯子型バナジウム化合物の研究


1991年にDagotto等が理論計算の結果から、スピン1/2の反強磁性 Heisenberg 一次元鎖が 偶数本結合した梯子を持つ spin ladder 物質 における spin gap の存在と、超伝導になりうる可能性が示唆された。
実際、1996年に上原等により梯子型物質Sr0.4Ca13.6Cu24O41において超伝導状態が確認された。
これを受けて本研究室では、 同様な梯子型の構造をとるバナジウム化合物 CaV2O5を母物質とし 、正孔注入による電子状態の変化を検証する。
CaV2O5は600K以上の大きなギャップが存在する物質でV上に電子を一つ持つspin 1/2のspin ladderと考えられている。

CaV2O5の結晶構造


CaV2O5の結晶構造を上に示した。赤がO、青がCa、ピラミッドの中にVが位置している。枠で囲まれた領域が単位格子である。 図からわかるように、酸素によって構成されている平面の上下にVO5ピラミッドが付き出だしている。



VO5ピラミッド


CaV2O5の基本構造はバナジウムが五つの酸素原子に囲まれたピラミッド構造をとっている。バナジウムはピラミッドのほぼ中心に位置している。


Vの梯子構造


上の図に見る様に、バナジウムの連なりは梯子を構成している。V原子は酸素を介した超交換相互作用によって相互作用している。 隣り合う梯子に属するバナジウム原子はVO5ピラミッドの底面によって構成される平面をはさんで反対側に位置しており各梯子同士の相関は小さい。
このページの図は全て、 独立行政法人・材料研究機構の泉富士夫氏作成の三次元結晶構造可視化ソフトVENUSを使用して作製しています。