LiCoO2へのCrドープによる結晶構造の変化を調べる
今、携帯電話は爆発的に普及をしていますが、これほどまでの普及の理由は携帯電話機そのものがどんどん小さく軽くなり、簡単に持ち運べるようになったことが挙げられるでしょう。
この15年間で重さがどれだけ変化したかというと・・・
1985年 ショルダーホン100型 重さ約3kg
2002年 FOMA P2101V 重さ約150g
もっとも軽い携帯電話は約57gで、この15年間で重さがショルダーホンの50分の1以下になりました。
このような軽量化のひとつの要因として、液晶の小型化が挙げられますが、リチウムイオン二次電池が開発されたことが大きいでしょう。
ここまで携帯電話を例として高電圧を必要とするモバイル機器で広く使われているLiCoO2を正極とするリチウムイオン二次電池が携帯電話の小型化に重要であることを述べました。
突然ですが具体的にLiCoO2の性質をQ&A形式で分かりやすく説明したいと思います。
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Q:LiCoO2って何?
A:図のような構造で、LiとCoO2が層になってサンドイッチのように重なりあっています。層状構造のおかげでリチウムイオンが出入りしやすくなっています。黄緑色のリチウムイオンが出たり入ったりすることで充放電が可能になります。
またリチウムイオンはイオン半径が0.74Åと圧倒的に小さいので単位体積あたりに含まれるイオンの数が多いので、エネルギー密度が高いのも特徴です。
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Q:リチウムイオン二次電池って何がすごいの?
A:図のように充電や放電によってリチウムイオンが正極と負極の間を行ったり来たりするだけなので、電極で反応が起こらず形態が変化することがないので劣化せず長いライフサイクルを持っています。また、アルカリ電池の三倍程度の電圧を得られるのでアルカリ電池の三本分が一本になり省スペースになります。

Q:この間携帯の電池が壊れて買いに行ったらすごく高価でした。どうにかなりませんか?
A:リチウムイオン二次電池は正極にLiCoO2を用いていますが、Coはレアメタルであり、値段も高価なため、新たな電極材料の開発が求められています。そこで、身近で安価な鉄やマンガンといったもので同じような層状の結晶を作る研究が盛んに行われています。が、現在も性能的にはCoを超えるものは開発されていません。
Q:そうなんですか・・・。でも、武田さんが何とかしてくれますよね?
A:えっ!?えぇ。(^-^;)そこでCoに少しずつ安価なCrを混ぜて同じ方法で結晶を作ってそれがどんな構造でどんな充放電特性をを持つか調べようと思っています。新たな特性が発見されて、携帯電話の電池が安くなる方向につながればいいなと思っています。
成果が出たら引き続き更新しますんで
結晶構造の図は 独立行政法人・材料研究機構の泉富士夫氏作成の三次元結晶構造可視化ソフトVENUSを使用して作製しています。
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